そして育児はつづく

共働き、23区西側での育児記録。

堪忍!映画館トホホ体験~渋谷系男子は映画を観たあと渋谷でどうなるか~

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2年ぐらい前の体験です。

冬のある日、禁欲的な作風で名高い監督の、現代にあって敢えて白黒で撮られたヨーロッパ映画を、一人で観に行ったときのことです。開場30分前には現場入り し、整理番号は栄光の3番。「少し後ろの左右ど真ん中」というベストポジションに、余裕で着席することができました。最初座った席でおにぎりを食べました が、一つ右のほうがど真ん中かな?と思って移動する余裕までありました。

そして、チラシや本などを読みながら上映時間を待っていると、左隣に若い渋谷系男子っぽい人が座ってきました。あまりちゃんと見なかったのですが、無害な雰囲気だったので特に気にしませんでした。

ところがです。いざ本編が始まってみると、早速気付いたことがあります。隣の男子の鼻息が物凄く荒いのです。たぶん癖なのでしょう、0.5秒で吸っ て0.5秒で吐くような、速い鼻息です。映画はすごく禁欲的で、セリフはほとんどなく、風の音がゴーッと鳴り響いたり、Aマイナーの弦楽曲が同じ旋律を 延々繰り返すだけでした。彼の鼻息は風が吹くと一層吹いて、Aマイナーの音楽のテンポをはるかに凌ぐ速さです。当然私は全く映画に集中できず、男子をチラ チラ見たり、左耳に指を突っ込んでみたり、鼻に指を突っ込んでいるように見える芸をしたりしてアピールしましたが、一向に気づく気配はありません。そこ で、「いっ そ」と思い、私も血走った目で、馬を思わせるような鼻息を響かせてやりました。ホラ、うるさいだろう?集中できないだろう?ということを思い知らせてやろ うと思ったのです。しかし相手は反省して鼻息を鎮めるどころか、今までのヘルツを上回る激しさの鼻息でもって応戦してきたのです。たぶん彼は「あ、いいん だ、この人もうるさいし僕も遠慮せずいこう」と思ったんだと思います。私は悔しさにハンカチを噛みました。そして諦めました。もう今回はまともな鑑賞環境 を期待するのはやめよう、と思いました。いつしか私は眠りに落ちました。そういえば、この監督の映画は前作も寝たんだった。

ふと意識が戻ったときにはエンドロール。男子の顔を一目にらんでやろうと、彼が席を立つと同時に私も立ち、後をつけました。すると彼はおもむろに電 話を取り出して会話をはじめ、「今観た映画すごい良かったよ、寝てた人もいたけど俺は良かったな~」と幸福そうにホクホクとのたまいました。なんというこ とでしょうか。寝てた人とは私のことでしょうか。で も私は怒りませんでした。なぜなら、彼のズボンのお尻のところに、米が一粒くっついているのを発見したからです。それはまぎれもなく、私が最初に彼の席に 座っていたときに食べたおにぎりの一粒でした。この時私はこの世に神の存在を確信しました(僕のアーバンブルーズへの貢献)。彼はこの後、スクランブル交 差点を渡り、友とあいさつを交わし、今日観た映画のことを、知的な語彙を用いて話すかもしれません。でも、尻に米ついてるよ。

こ の映画は後から調べてみるとすごく評価が高いみたいでした。ですが、かわいそうな私には良さが全くわかりませんでした。映画館って、隣にどんな人がくるの かがわからないところがスリルで、そしてそれはあんまり楽しくないスリルだと思うのです。それでもやっぱり映画館に行ってしまうんだよなぁ。でもこのとき は、鼻息だけしか頭になかった。

 

(最近更新できなくなってきた映画ブログからの転載。雑記のみちょくちょく転載することにします)